(前回のお話・・・
中学校入学後、学校生活に適応できずどんどん疲弊していった娘Sは、ある日「頭が真っ白になる」と言って体育の授業での異変を訴えました。
その言葉に危機感を覚えた私は、娘と共に市の教育相談室に行き、発達検査の予約をすることにしたのでした)
予約の日、娘と共に再び教育相談室を訪れました。
娘には事前に、
「次に相談室に言った時は、検査をしてもらったらどうかな、と思ってるんだ。
その検査をすると、Sがどんなことが得意で、どんなことが苦手かがわかると思うの。
今、Sは中学校で困っていることが沢山あるでしょう?
検査をして苦手な部分がわかれば、その困っていることの解決策や対応策が見つかるかもしれない。
そのヒントをもらいに、検査に行ってみない?」
と説明していました。
娘は、私のその説明に特に反発や疑問を持つことはなかったようで、
…というより、本人が一番どうしたら良いか困っていたからこそ、検査をすることもすんなり受け入れてくれたのではないかな、と思います。
「うん、わかった。検査受けてみる。」
娘はすぐにそう言いました。
相談室に着くと、前回と同じ相談員の方と臨床心理士の方が迎えてくれました。
検査について簡単な説明があり、その後すぐに検査が始まりました。
その間1時間ちょっと、私は別室で待ち、検査が終わると娘が部屋から出てきました。
「検査、どうだった?」
と聞くと、ちょっと困ったように笑いながら
「うーん、なんか時間がなくて、あんまり出来なかった気がするし、覚えたりするのも出来なかった。」
と言います。
そうかそうか、頑張ったね、と話しながら、その後結果が出るまで2人で話しながら待っていました。
1時間ほど経った頃、
「結果をお伝えするので、とりあえずお母さん中にどうぞ」
と呼ばれました。
結果はどうだったんだろうか、本人はあまり出来なかった、と話していたけれど…
そう思いながらドキドキしながら相談室に入りました。
にこやかな臨床心理士の方の表情が、心なしかぎこちない笑顔に見えて、私は急速に不安な気持ちが沸いてきました。
「これが結果です」
そういって、渡された紙から最初に目に飛び込んできたもの
それは
IQ69
という文字でした。
え!?
私は言葉が出ませんでした。
言葉が出ないまま、みるみる間に涙で視界がぼやけていきます。
なんて言葉にして良いかわからないくらい動揺し、結果を持つ手がぶるぶると震えて、ぼたぼたと大きな涙の塊が膝に落ちていきました。
・・・69・・・
涙で上手く呼吸が出来ないまま、私はその数字を頭の中で繰り返しました。
IQ69、それは一般的に軽度知的障がいに分類される値でした。
(※下記注釈)
相談員と臨床心理士の方は、そんな私の様子を何も言わず見守ってくださっているようでした。
しばらくして、ようやく話せるようになった私は言いました。
「こ、こんなにも低かったんですね…
…こんなに低いのに、頑張ってみんなに付いていこうとしてたんですね…
きっとすごく大変でしたよね…
私、そんな大変なことをあの子にさせてしまっていたんですね…」
想像以上に娘のIQが低かった、ということの衝撃ももちろんありましたが、それ以上に、他の子と同じようになるということがどれだけ娘にとって大変だったか…
娘のたどってきた道のりの険しさを思うと、申し訳なさから涙が次から次へと溢れてきたのでした😢
その後、臨床心理士の方は検査結果の詳しい説明をしてくださいました。
・行われた検査はWISC(ウィスク)という検査で、全検査IQと「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標を合わせた、5つの得点を知ることが出来ること。
・IQ69、というのは全検査IQの結果であり、娘の場合、他の4つ全ての指標でも得点が低く60台であったこと。
・指標ごとの得点のばらつきが大きければ大きいほど生きづらさも大きくなる、いわゆる「発達の凸凹がある=発達障がい」と言われる状態になるが、娘の場合は全て低めなので発達の凸凹はない状態。つまり、全般的に知的発達が低い状態であること。
さらにこう続けました。
「正直、私もSさんとお話した印象では、もう少し高い得点が出るんじゃないかと感じていました。でも、それは本人が相当頑張っていたからなんだろうな、というふうに思います。
検査の値が全てではありませんが、それでもこの結果で中学校の普通級の中にいるということは、Sさんにとってすごく大変だったのではないかと思います。
もし今後、ものすごく頑張ったとしても、実際はテストで50~60点取るのが精いっぱい、そういう感じだと思います。」
「今後どうするかも含めて相談が必要になると思いますので、もしお母さんが良ければ、ですが、この結果を中学校に送らせていただきたいと思いますが、どうでしょうか?」
今後どうするか…
その時の私にはまったく考えることが出来ませんでした。
とにかく、外で待っている娘に泣き顔を見られないようにしなければ、ということや、この結果を娘にどう話したら良いんだろう…
そんなことばかりが、頭の中をぐるぐる回っていました。
とりあえず、結果は中学校にも送ってもらうことをお願いして…
そこからがまた、娘と2人、厳しい道のりを歩く日々の始まりとなったのでした。
…つづきます。
※注釈
この発達検査だけで発達障がいや知的障がいの診断をすることはありませんが、診断基準の1つの指標として使われています。
IQは、全般的な知的発達の水準を表すもので、100を平均としています。
基準としては、IQ80~120が平均内のレベル、IQ70~79が境界線レベル、IQ69以下を軽度の遅れが認められるレベル、と言われています。(IQ75未満を軽度知的障がいとする場合もあります。)
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