流産の経験が教えてくれたこと NICUからの景色⑤
(前回の続き…
NICUで勤務していた私は、ある日妊娠に気付きます。
しかし、相手の彼には堕ろすことも考えてほしいと言われ、失意の中自分一人で育てる決心をしました。
そんな矢先、勤務中に出血していることに気づきました…)
出血量はそこまで多くありませんでしたが、私は大慌てで婦長さんに事情を話し、早退させてもらうことにしました💦
職場には迷惑をかけてしまいますが、その時の私は自分の赤ちゃんを守ることだけを考えるのにとにかく必死でした😢💦
お願いだから無事でいて!
お願いだから元気でいて!
一緒に生きていくって決めたんだから、頑張って!
そう、お腹の子に何度も話しかけながらタクシーで帰宅し、とにかく安静にしました。
しかし…
その日の夜に大量の出血が見られ・・・
勤務している病院の夜間救急を受診し産科のエコーで診てもらった画像には、もう赤ちゃんの姿は映っていませんでした…。
あまりに悲しくて悲しくて、診察台の上でも人目を気にせず泣きました。
目はぼんぼんに腫れましたが、いくら泣いても涙は次々と溢れて止まりません。
診察を終えた産科のドクターは、
「出血量も多いし、エコーで見た感じお腹の中に残っている量もそんなに多くなさそうだから、あとは自然と出てくると思います。子宮の収縮を促すお薬と、感染予防のためのお薬を出しておくので、また1週間後に受診してください。」
そう淡々と私に言いました。
その言葉をどう受け止めて良いかもわからず、私はただただ呆然としていました。
その後、助産師さんに車いすに乗せられ廊下に出たところで、偶然一人の女性が通りかかりました。
普段NICUで一緒に働いている副婦長さんです。
泣きすぎて人相が変わっている私の姿を見た副婦長さんは事態をすぐに察したようで、私のところに駆け寄ってきました。
「しっかりしなさい!お母さんでしょ!赤ちゃんはさこさんを見てるよ!」
!!!
「あ…ありがとうございます…!」
副婦長さんの言葉に心が揺り動かされながらも、その時はそう返事をするのが精一杯でした。
その後、仕事を1週間ほどお休みさせてもらい、私は職場へと復帰しました。
″周りのスタッフの方々は自分をどう思っているのだろう…″
妊娠がわかった時は、嬉しすぎて周りにどう思われるかどうかなんて全然気にもならなかったのに、沢山迷惑をかけてしまった、という後ろめたさもあり、復帰する時にはそこがものすごく気がかりでした。
しかし、そんな私の心配をよそに、周りの方々は普通通りに接してくださいました。
あの夜に声をかけてくれた副婦長さんも「体調、もういいの?」と明るく声をかけてくださり、ホッと安心して私はまた働き始めることが出来ました。
その一方で、彼とはどうなったかと言いますと…
彼もちょっとは責任を感じたようで、流産後の静養中、私に会いにやってきました。
流産したことを告げた時、
彼がホッとした顔をしたのを私は見逃しませんでした(;一_一)
それなのに、その後彼は私にこう言いました。
「そんなに落ち込まないでさ。
また作ればいいじゃん。」
・・・・・
″あー…ダメだ、この人″
私の中で完全に終了のブザーが鳴った瞬間でした。
そんなわけで、私は長年お付き合いしていた恋人も、せっかくお腹に宿ってくれた赤ちゃんも、ほぼ同時に失ってしまいました。
自分の大切なものが手の平からはらはらとこぼれ落ちてしまったかのような喪失感。
その喪失感はとてつもなく大きくて、心の痛みが癒えるまで1年以上かかりました。
職場に行くと沢山の赤ちゃんがいたのでその度に思い出し…
そういう環境的なものもあって、もしかしたら回復にちょっと長くかかってしまったのかもしれません。
ただ、そんな中で喪失感を癒すのを助けてくれたもの。
それは、時間と…
あの夜に副婦長さんが私にかけてくださった言葉でした✨
しっかりしなさい!お母さんでしょ!赤ちゃんはさこさんを見てるよ!
その言葉は、その後も何度も何度も私の中によみがえり、その度に私は赤ちゃんに恥じない自分でいようと思うことが出来ました。
本当に短い時間だったけれど、私をお母さんにしてくれたあの子が見てくれている、そう思うことで私は少し強くなれた気がします✨
そして、心の傷が癒えた頃、私は思ったのです。
流産を経験した私が、このNICUで働いていることにはきっと意味がある。
私は子どもを失った悲しみを知っているからこそ、今までよりももっと、ここにいる子どもたちとお父さんお母さんたちの気持ちに寄り添える看護師になれるんじゃないか。
私のお腹に来てくれた子は、私に沢山のことを教えてくれました。
会うことは叶わなかったけれど、私の人生を大きく変えてくれました。
私はあの子に言いたいです。
本当にありがとう✨
あなたのお陰で私は今でも、子どもに関わる仕事を続けられています。
世の中の子どもたちを少しでも幸せにしたい
その子がその子らしく、イキイキと輝けるようにお手伝いがしたい
そういう思いで、毎日生きています。
あなたの存在が、私をここまで連れてきてくれました。
あの時、私のところに来てくれて本当にありがとう✨
と。
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